在宅ワーク時代の予防歯科|だらだら食べと口呼吸がインプラントリスクを高める理由
- 2026年1月21日
- 予防歯科
在宅ワーク時代の新たな口腔リスク
在宅ワークが日常となった現代。通勤時間がなくなり、自由な時間が増えた一方で、お口の健康に深刻な影響が出ていることをご存知でしょうか?
私の診療室でも、在宅ワークを始めてから虫歯や歯周病が急速に進行した患者さんが増えています。特に気になるのが「だらだら食べ」と「口呼吸」という2つの習慣でしょう。これらは一見些細な生活習慣に見えますが、実は将来的なインプラント治療のリスクを大きく高める要因なのです。
在宅ワーク環境では、オフィスにいる時と比べて間食の回数が増えたり、長時間同じ姿勢でパソコン作業を続けることで口呼吸になりやすくなります。こうした環境変化が、お口の中に静かに、しかし確実にダメージを与え続けているのです。
「だらだら食べ」が歯を溶かし続けるメカニズム
仕事の合間にお菓子をつまむ。コーヒーを飲みながら資料を読む。
こうした何気ない行動が、実はお口の中で深刻な事態を引き起こしています。食事をすると、お口の中は中性から酸性に傾きます。この酸性状態では、歯の表面のエナメル質が溶け始める「脱灰」という現象が起こるのです。
通常であれば、唾液の働きによって20~30分程度で中性に戻り、溶けかけた歯の表面が修復される「再石灰化」が起こります。しかし、だらだらと食べたり飲んだりしていると、お口の中は常に酸性状態が続き、再石灰化が追いつかなくなってしまうのです。
在宅ワークでは、オフィスにいる時よりも自由に飲食できる環境にあります。そのため「いつでも」「好きな時間に」「食べたいものを食べたいだけ」という状態になりがちでしょう。この習慣こそが、虫歯や歯周病を進行させる最大の要因となっています。
特に注意が必要なのは、砂糖入りの飲み物を常に手元に置いている場合です。一日を通して甘いカフェラテやジュースを飲んでいると、お口の中は長時間にわたって酸性状態のままになり、虫歯菌が活発に活動し続けることになります。
出典サファイアデンタルクリニック「テレワーク中の間食対策!虫歯になりにくいおやつとは?」より作成
口呼吸が引き起こす深刻な口腔環境の悪化
在宅ワークで長時間パソコン作業をしていると、無意識のうちに口が開いて口呼吸になっていることはありませんか?
実は、この口呼吸こそが、お口の健康を脅かす重大な問題なのです。人間の体は本来、鼻で呼吸するように設計されています。鼻には「加湿器」「空気清浄機」「エアコン」という3つの機能があり、外気を適切に処理してから肺に送り込む役割を果たしているのです。
鼻呼吸では、乾燥した外気が鼻腔内の分泌物によって加湿され、肺に到達する頃には湿度が約90%にまで高まります。しかし口呼吸では、乾燥した空気が直接お口の中に入り込み、唾液が蒸発して口腔内が乾燥してしまうのです。
唾液には、お口の中を洗い流し、酸を中和し、歯の再石灰化を助けるという重要な働きがあります。口呼吸によって唾液が減少すると、これらの防御機能が弱まり、虫歯菌や歯周病菌が活動しやすい環境になってしまうのです。
さらに深刻なのは、口呼吸が姿勢の悪化と密接に関係している点でしょう。在宅ワークでは、ノートパソコンやタブレットで長時間作業することが多く、前かがみの姿勢になりがちです。この姿勢では、頭が肩よりも前に出て、顎を動かす筋肉や首の筋肉に異常な緊張が生じます。
その結果、無意識のうちに歯を噛みしめる「歯列接触癖(TCH)」が起こりやすくなります。通常、上下の歯が接触しているのは食事や会話の時だけで、1日わずか20分以下でしょう。しかし、長時間の噛みしめが続くと、歯を支える組織に大きな負担がかかり、歯周病の進行が加速してしまうのです。
出典中村歯科医院「テレワーク中に気をつけたいこと」より作成
なぜインプラント治療のリスクが高まるのか
「だらだら食べ」と「口呼吸」がインプラント治療にどう関係するのか?
この2つの習慣は、歯を失う2大原因である虫歯と歯周病を急速に進行させます。虫歯が進行して歯の神経まで達すると、最終的には抜歯が必要になることがあります。また、歯周病が進行すると、歯を支える骨が溶けて歯がグラグラになり、やはり抜歯せざるを得なくなるのです。
歯を失った場合の治療選択肢として、インプラント治療があります。しかし、インプラント治療を成功させるためには、十分な骨の量と質、そして健康な歯ぐきが必要でしょう。歯周病で骨が大きく失われている場合、インプラント治療が困難になったり、骨を増やす追加の手術が必要になることがあります。
さらに重要なのは、インプラント治療後の維持管理です。インプラント周囲炎という、インプラントの周りに起こる歯周病のような炎症があります。口呼吸による口腔内の乾燥や、だらだら食べによる細菌の増殖は、インプラント周囲炎のリスクを高める要因となるのです。
実際、喫煙と同様に、口呼吸もインプラントの長期的な成功率を下げる要因として注目されています。口腔内が乾燥すると、インプラント周囲の組織の血流が低下し、免疫機能が弱まるためです。せっかく高額な費用をかけてインプラント治療を受けても、生活習慣が改善されなければ、長持ちさせることが難しくなってしまうのです。

今日から始められる予防歯科の実践方法
では、どうすれば在宅ワーク環境でお口の健康を守ることができるのでしょうか?
間食の時間を決める
まず最も重要なのは、間食の時間を決めることです。「だらだら食べ」を防ぐために、間食は1日2回まで、時間を決めて摂るようにしましょう。例えば、午前10時と午後3時というように、時間を固定することで、お口の中が酸性になる時間を限定できます。
間食の内容も工夫が必要でしょう。糖分の多いお菓子やジュースではなく、ナッツ類やチーズ、無糖ヨーグルトなど、虫歯になりにくいものを選びましょう。キシリトール配合のガムやタブレットも、虫歯予防に効果的です。
鼻呼吸を意識する
口呼吸を改善するためには、まず自分が口呼吸をしているかどうかを意識することが大切です。パソコンのモニターに「鼻で呼吸!」というメモを貼っておくだけでも、意識的に鼻呼吸を心がけるきっかけになります。
作業姿勢の改善も重要でしょう。ディスプレー画面は目線よりやや下に配置し、40cm以上離れるようにしましょう。椅子には深く腰掛け、背筋を伸ばして足の裏をしっかり床につけます。この姿勢を保つことで、顎を上げて口が開く姿勢を防ぐことができます。
1時間ごとの休憩とストレッチ
1時間作業をしたら10分休憩を取り、軽く体を動かしたりストレッチをしましょう。これにより、筋肉の緊張が解放され、無意識の噛みしめや口呼吸を防ぐことができます。休憩時には、水やお茶を飲んで口腔内を潤すことも忘れずに。
食後の歯磨きを徹底する
在宅ワークの利点は、食後すぐに歯磨きができることでしょう。この利点を最大限に活用しましょう。食後の歯磨きは、間食を防ぐ効果もあります。お口の中をすっきりと磨くと、再びお菓子や甘い飲み物を口にする気持ちがなくなるのです。
フッ素入りの歯磨き剤を使用し、歯間ブラシやデンタルフロスも併用することで、より効果的な口腔ケアが可能になります。特に歯と歯の間は歯ブラシだけでは十分に清掃できないため、補助器具の使用が重要でしょう。

定期的な歯科検診が将来のインプラントリスクを減らす
どんなに自宅でのケアを頑張っても、プロフェッショナルケアには代えられません。
定期的な歯科検診では、自分では気づかない初期の虫歯や歯周病を早期に発見できます。特に在宅ワークが続いている方は、生活習慣の変化による口腔内の変化をチェックするためにも、3~6ヶ月に一度の定期検診をお勧めします。
歯科医院でのプロフェッショナルクリーニングでは、自分では落としきれない歯石やバイオフィルムを除去できるのです。また、歯科衛生士による正しいブラッシング指導を受けることで、日々のセルフケアの質も向上します。
私の診療室では、口腔内写真やレントゲンを撮影し、患者さんと一緒に現在の状態を確認しながら、予防プランを立てています。一人ひとりの生活習慣や口腔内の状態に合わせたオーダーメイドの予防プログラムを提案することで、将来的な歯の喪失やインプラント治療のリスクを最小限に抑えることができるのです。
まとめ|小さな習慣の改善が、将来の大きな治療を防ぐ
在宅ワーク時代の「だらだら食べ」と「口呼吸」は、一見些細な習慣に見えますが、長期的にはお口の健康に深刻な影響を及ぼします。
これらの習慣が虫歯や歯周病を進行させ、最終的には歯を失い、インプラント治療が必要になるリスクを高めてしまうのです。しかし、今日から実践できる予防方法を取り入れることで、このリスクは大幅に減らすことができるでしょう。
間食の時間を決める。鼻呼吸を意識する。正しい姿勢で作業する。食後の歯磨きを徹底する。そして定期的に歯科検診を受ける。これらの小さな習慣の積み重ねが、将来の大きな治療を防ぎ、健康な歯を守ることにつながります。
在宅ワークという新しい働き方に合わせて、お口のケアも見直してみませんか?あなたの大切な歯を守るために、今日から一歩踏み出しましょう。
お口の健康に関するご相談や、予防歯科について詳しく知りたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。赤坂駅から徒歩1分、平日は22時まで診療しておりますので、お仕事帰りにも通いやすい環境です。詳しくは赤坂ONO Dental Clinicの公式サイトをご覧ください。
監修者プロフィール
院長 小野 雄大(おの たけひろ)先生

略歴
– 2015年3月:岩手医科大学 歯科医師臨床研修 修了
– 医療法人(秋田)、岩手医科大学放射線科、神奈川県内医療法人などで幅広く勤務
– 2024年2月:赤坂ONO Dental Clinic 開業
診療スタンス
– 丁寧なカウンセリングを重視し、口腔内写真やレントゲンを用いて現在の状態をしっかり説明
– 患者さまに治療内容のメリット・デメリットを理解していただいた上で選択してもらう治療方針を実践
– 自身も歯科治療の経験があることから、「患者さまに寄り添う治療」を大切にしている

