予防歯科 妊娠期 更年期 高齢者 口腔ケアの基本から応用まで
- 2025年12月16日
- 予防歯科
人生のステージごとに変わる口腔ケアの重要性
お口の健康は、年齢や体の変化とともに求められるケアの内容が大きく変わります。
特に女性の場合、妊娠期や更年期といったホルモンバランスが変化する時期には、口腔環境も大きく影響を受けやすくなります。また、高齢期に入ると唾液の分泌量が減少し、むし歯や歯周病のリスクが高まることも知られています。
こうしたライフステージごとの変化に応じた適切な口腔ケアを行うことで、将来的な歯のトラブルを未然に防ぎ、健康な生活を維持することができます。今回は、妊娠期・更年期・高齢期それぞれの口腔ケアについて、基本から応用まで詳しく解説していきます。

妊娠期の口腔ケア・・・赤ちゃんの健康を守るために
妊娠中に起こりやすい口腔トラブルとは
妊娠すると、女性ホルモンの増加により口の中の環境が大きく変化します。
唾液の分泌が低下することで、口の中を正常に保つ自浄作用が弱まり、さまざまなトラブルが起こりやすくなります。代表的なものとして「妊娠性歯肉炎」があります。これは歯茎に炎症が起こりやすくなり、出血や腫れが気になる状態です。
また、つわりによる食生活の乱れや、唾液分泌の変化で歯が溶けやすくなることから、むし歯の進行が早まる可能性もあります。口臭が発生しやすくなったり、口内炎ができやすくなったりすることも珍しくありません。
さらに、親知らずの周囲に炎症が起きる「智歯周囲炎」も注意が必要です。
つわりがひどい時の歯みがきのコツ
妊娠初期は、つわりがひどくハブラシを口にするのも苦労する時期です。
そんな時は、一日のうちで体調のよい時間を見つけて、リラックスして歯みがきを行いましょう。ヘッドの小さいハブラシを使用すると、嘔吐感を避けやすくなります。歯みがきの時は、下の方を向いて前かがみの体勢になり、ハブラシを舌に当てないようにすると良いでしょう。
ハブラシは小刻みに動かすことがポイントです。
ハミガキ剤は、香料や味の強いものは避けるとよいでしょう。どうしても歯みがきができない時には、デンタルリンスや水でのブクブクうがいをするだけでも効果があります。
妊娠中期(安定期)は歯科治療の適期
妊娠中期は体調も比較的安定しているため、歯科治療を受けるのに適した時期です。
一度に食べられる量が減ってしまうため、空腹状態が多くなり、間食などの食べる回数が増えやすい時期でもあります。妊娠中は唾液の量が減り、自浄作用が弱まるため、食後の歯みがきによるケアが重要です。歯みがきの基本を再確認してリスクを減らしましょう。
後期に入ってお腹が大きくなるとあお向け治療を受けるのが大変になります。
何か悩みがある場合は、この時期に歯科医院に相談しに行くことをおすすめします。妊娠中でも、歯科治療に使用する麻酔はごく少量の局所麻酔ですので、胎児に影響はありません。レントゲンも防御服を着用すれば、問題ありません。
赤ちゃんへの影響を考えた口腔ケア
お母さんのお口の健康状態が赤ちゃんにも影響を与える場合があります。
実は、お母さんのお口の中のむし歯菌や歯周病菌が赤ちゃんに感染する可能性があるのです。特に生後3歳までの時期は、むし歯菌に感染しやすいといわれており、お母さんが口の中を清潔に保っていると、赤ちゃんのむし歯リスクを減らすことにつながります。
パパやママが使ったスプーンで赤ちゃんに食べさせたり、噛み砕いたごはんをあげたり、またキスしたりすることで、細菌がうつる可能性があります。妊娠後期は出産準備や日々の仕事や家事で忙しくなり、つい歯みがきをおろそかにしてしまいがちな時期ですが、正しいオーラルヘルスケアを心がけましょう。

更年期女性の口腔ケア・・・ドライマウスに要注意
更年期とは・・・ホルモンバランスの変化
閉経の前後約10年を更年期と呼びます。
日本人女性の閉経は平均で50.5歳と言われており、1年以上月経がない場合に閉経と診断されます。平均年齢から考えると、40〜60歳ぐらいの方に更年期の症状が現れる可能性があります。
女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)の分泌は20〜30代でピークを迎えますが、その後急激に減少することで、さまざまな身体的・精神的症状が出てくるのが「更年期障害」です。のぼせや顔の火照り、脈が速くなる、動悸や息切れ、異常な発汗、血圧が上下する、耳鳴り、頭痛やめまいなどの身体的症状に加え、興奮亢進、イライラや不安感、うつ、不眠などの精神的症状が現れます。
更年期にドライマウスになりやすい理由
女性ホルモンのエストロゲンには皮膚や粘膜の保護作用・潤い保持作用があります。
しかし、加齢に伴いエストロゲンの分泌が減ることで、唾液の調整も乱れドライマウスになりやすくなります。のどの乾きを訴える方には、ドライマウス用の口腔湿潤剤を活用するのがおすすめです。湿潤剤にはジェルタイプ・液体タイプ・スプレータイプなどがあります。
更年期の患者さんは唾液の分泌量が減ることや、服用する薬が増えてくることなどが影響してドライマウスになりがちです。
更年期は歯周病にも要注意
女性には人生で歯周病にかかりやすい時期が3回あると言われています。
最初は女性ホルモンが大量に分泌される初潮を迎える頃です。次に妊娠時で、妊娠中に女性ホルモンが増加することで歯周病リスクが高まります。そして最後が更年期です。
女性ホルモンが減ることで骨密度が下がり骨粗鬆症になりやすいことは有名ですが、顎の骨も弱くなるので注意が必要です。抜歯の主原因第1位が歯周病であることから、歯周病を防ぐことが患者さん自身の歯を残すための一番の予防策と言えるかもしれません。
ドライマウスだけでなく歯周病にも注意が必要な時期です。

高齢者の口腔ケア・・・健康寿命を延ばすために
加齢による口腔環境の変化
高齢期に入ると、唾液の分泌量が減少し、むし歯や歯周病のリスクが高まることが知られています。
また、歯茎が下がることで歯の根元が露出し、そこからむし歯になりやすくなります。さらに、服用する薬が増えることで、薬の副作用として口の乾きが強くなることもあります。
口の中が乾燥すると、食べ物を飲み込みにくくなったり、味覚が鈍くなったりすることもあります。
こうした変化に対応するため、高齢期には特に丁寧な口腔ケアが必要になります。
高齢者の口腔ケアのポイント
高齢者の口腔ケアでは、まず丁寧なブラッシングが基本です。
体調がすぐれない時でも、歯茎のキワや歯と歯の間を意識して磨くことが大切です。フロスや歯間ブラシの活用も重要で、むし歯や歯周病リスクが高い部分(歯と歯の間)を重点的にケアしましょう。
食後のうがいも効果的です。
歯磨きが難しい時は、うがいだけでも口の中を清潔に保つことができます。無理をせず、自分に合ったペースで行うことがポイントです。
定期的な歯科検診の重要性
高齢期には、定期的な歯科検診がより重要になります。
自宅でのオーラルヘルスケアとあわせて歯科医院で定期健診を受けることで、早期発見・早期治療ができ、歯を失うリスクを減らすことができます。ブラッシングだけでは取りにくい歯垢(プラーク)には、歯科医院でのクリーニングや、フロスなどでキレイにすることが効果的です。
健康寿命を延ばすためにも、定期的な歯科検診を習慣にしましょう。
ライフステージに応じた予防歯科の実践
歯みがきの基本を再確認しよう
どのライフステージでも、歯みがきの基本は変わりません。
1か所を20回以上、歯並びに合わせてハブラシを動かしましょう。毛先の届きにくい歯も工夫して丁寧にみがくことが大切です。でこぼこ歯並びの場合は、前歯のでこぼこしている歯を1本1本にハブラシを縦にあてて毛先を上下に細かく動かしましょう。
奥歯の背の低い歯に対しては、ハブラシを斜め横から入れて、細かく動かします。
歯と歯ぐき(歯肉)の境目には、45度の角度に毛先をあててハブラシを5mm幅程度で動かしましょう。
デンタルフロスで歯と歯の間もケア
ハブラシのみでは落ちにくい歯と歯の間の歯垢(プラーク)。
デンタルフロスを使用することで、歯間部の歯垢除去率が大幅に向上します。ハブラシだけでは約60%程度の歯垢しか除去できませんが、デンタルフロスを併用することで約80%以上の歯垢を除去できると言われています。
デンタルフロスを活用して、しっかり除去してむし歯を予防しましょう。
フッ素配合ハミガキ剤の活用
むし歯予防に効果的なフッ素配合ハミガキ剤の使用もおすすめです。
フッ素には歯の表面を強化し、むし歯になりにくくする効果があります。特に妊娠初期や高齢期など、むし歯リスクが高まる時期には、フッ素配合ハミガキ剤を積極的に活用しましょう。
ただし、つわりがひどい時期は、香料や味の強いものは避けるとよいでしょう。

まとめ・・・人生のステージに合わせた口腔ケアを
妊娠期・更年期・高齢期と、人生のステージごとに口腔環境は大きく変化します。
それぞれの時期に応じた適切な口腔ケアを行うことで、将来的な歯のトラブルを未然に防ぎ、健康な生活を維持することができます。妊娠期には赤ちゃんへの影響も考えた丁寧なケアを、更年期にはドライマウスや歯周病に注意したケアを、高齢期には唾液分泌の減少に対応したケアを心がけましょう。
そして、どのライフステージでも、定期的な歯科検診が重要です。
赤坂ONO Dental Clinicでは、患者様一人ひとりのライフステージに合わせた口腔ケアのアドバイスと、丁寧なカウンセリングを行っています。赤坂駅から徒歩1分という好立地で、平日は22時まで、土日も18時まで診療しておりますので、お仕事帰りや週末にも通院しやすい環境です。
詳しくは赤坂ONO Dental Clinicの公式サイトをご覧ください。
監修者プロフィール
院長 小野 雄大(おの たけひろ)先生

略歴
– 2015年3月:岩手医科大学 歯科医師臨床研修 修了
– 医療法人(秋田)、岩手医科大学放射線科、神奈川県内医療法人などで幅広く勤務
– 2024年2月:赤坂ONO Dental Clinic 開業
診療スタンス
– 丁寧なカウンセリングを重視し、口腔内写真やレントゲンを用いて現在の状態をしっかり説明
– 患者さまに治療内容のメリット・デメリットを理解していただいた上で選択してもらう治療方針を実践
– 自身も歯科治療の経験があることから、「患者さまに寄り添う治療」を大切にしている

