予防歯科でインプラントを守る|定期検診でチェックしている5つのポイント
インプラント治療を受けた後、「もう歯医者に通わなくていい」と考えていませんか?
実は、インプラントこそ定期的なメンテナンスが必要です。天然の歯と同じように、いえ、場合によってはそれ以上に、予防歯科でのケアが重要になります。
私は赤坂ONO Dental Clinicの院長として、多くのインプラント患者様の定期検診を行ってきました。その経験から、適切なメンテナンスがインプラントの寿命を大きく左右することを実感しています。今回は、インプラントを長持ちさせるために定期検診でチェックしている5つのポイントについて、基本から応用まで詳しく解説します。

インプラントにこそ予防歯科が必要な理由
インプラントは虫歯にはなりません。
チタン製のため、虫歯菌では溶かすことができないからです。しかし、だからといって安心してはいけません。インプラントには「インプラント周囲炎」という、天然の歯の歯周病に相当する病気があるのです。
研究によれば、インプラント治療後3年以内に40%以上の患者様がインプラント周囲粘膜炎やインプラント周囲炎を発症しているというデータもあります。さらに驚くべきことに、80%の方がインプラント周囲粘膜炎を、30〜55%の方がインプラント周囲炎を発症しているという報告もあるのです。
天然の歯よりも進行が速い
インプラント周囲炎の恐ろしいところは、天然の歯の歯周病よりも進行速度が圧倒的に速いという点です。
これは、インプラントには「歯根膜」という組織がないためです。天然の歯は歯根膜という組織があり、歯と骨がじん帯でくっついています。この歯根膜は噛む時のクッションの役割を果たすだけでなく、細菌からの侵入を防ぐバリア機能も持っています。
一方、インプラントは直接骨にくっついているため、細菌が侵入した場合の防御機能が弱く、感染が急速に進行してしまうのです。気づいたときには重症化しているケースも少なくありません。
再治療の負担は想像以上に大きい
インプラント周囲炎が重症化してインプラントを撤去し、再治療が必要になった場合、その負担は想像以上に大きくなります。まず、細菌感染した部分を完全に除去し、清潔な状態にする必要があります。その後、骨を失った部分に骨を足す手術をし、完全に骨が再生してからインプラントを埋めていく治療が一般的です。
骨を足す手術とインプラントを埋める手術と2回の手術が必要になり、身体への負担も大きくなります。さらに、骨が再生するまでの治癒期間がかかるので、被せ物が入って噛めるようになるまでは数年かかるケースもあります。費用面だけでなく、治療期間が長くなったり、身体への負担が大きくなったりと、デメリットは計り知れません。
定期検診でチェックしている5つのポイント
では、実際に私たちが定期検診でどのようなチェックを行っているのか、5つのポイントに分けて詳しく解説します。
1. 歯周病の重症度検査
インプラント周囲の歯周ポケットの深さを測定します。
この検査は天然の歯の歯周病検査と似ていますが、インプラントの場合はより慎重に行う必要があります。インプラントは直接骨にくっついているため、天然の歯のような柔軟さがありません。正確に器具を入れていかないと正しい病状がわからないのです。
無理に入れてしまえば、逆に組織を傷つけてしまうリスクがありますし、かといって慎重になりすぎれば出血や膿を見逃してしまいます。専門的な技術と経験が必要な検査です。
2. レントゲン撮影による骨の状態確認
目に見えない骨の状態を確認するため、定期的にレントゲン撮影を行います。インプラント周囲の骨が溶けていないか、インプラント本体に問題がないかをチェックします。初期段階の骨吸収は外見からは判断できないため、レントゲン検査は非常に重要です。
当院では、必要に応じてCTスキャンも活用し、三次元的に骨の状態を把握することもあります。これにより、より精密な診断が可能になります。
3. プロフェッショナルケアとクリーニング
患者様ご自身の歯磨きでは磨ききれない場所を、歯科衛生士の手できれいに磨き上げます。
その後、特殊な器具を使って歯石のクリーニングを行います。インプラントのメンテナンスでは、専用の器具を使用する必要があります。通常の歯石除去器具では、インプラントの表面を傷つけてしまう可能性があるからです。
パウダーやガーゼ、スーパーフロスという通常のフロスでは除去できない部分に使用するフロスを使ったりと、専門的にケアしていきます。インプラントと歯茎の境目は特に汚れが溜まりやすく、細菌の温床になりやすいため、丁寧にクリーニングします。
4. 噛み合わせの調節
インプラントには歯根膜がないため、噛む力が直接骨に伝わります。そのため、噛み合わせのバランスが崩れると、インプラントや周囲の骨に過度な負担がかかってしまいます。定期検診では、噛み合わせのバランスをチェックし、必要に応じて調節を行います。
また、夜間の歯ぎしりや食いしばりがある方には、ナイトガードの使用をおすすめしています。ナイトガードの調節も定期検診の重要な項目の一つです。
5. 口腔内全体の状態確認とアドバイス
インプラントだけでなく、口腔内全体の健康状態を確認します。他の天然の歯に虫歯や歯周病がないか、粘膜に異常がないかなどをチェックします。インプラント周囲炎のリスクを高める要因として、他の歯の歯周病が挙げられるため、口腔内全体の健康管理が重要です。
また、患者様の生活習慣や食事内容についてもヒアリングし、必要に応じてアドバイスを行います。喫煙習慣がある方には禁煙のサポートも行います。喫煙はインプラント周囲炎のリスクを大幅に高めることが分かっているからです。

定期検診の頻度と費用について
定期検診の頻度は、患者様の口腔内の状態によって異なります。
一般的には3ヶ月に1回の頻度をおすすめしています。インプラント周囲炎のリスクが高い方や、すでに軽度の炎症が見られる方には、1〜2ヶ月に1回の頻度でメンテナンスを行うこともあります。
検診費用の目安
定期検診の費用は、保険診療の範囲内で行える場合と、自費診療になる場合があります。基本的な検査やクリーニングは保険診療で対応できることが多いですが、インプラント専用のメンテナンスや特殊なクリーニングが必要な場合は自費診療となることもあります。
費用の詳細については、患者様の状態や必要な処置によって異なりますので、カウンセリング時に詳しくご説明させていただきます。
保証制度との関係
多くの歯科医院では、インプラントに保証を付けています。
保証期間は治療終了後、約5〜10年が一般的です。この保証を受けるための条件として、定期検診が含まれていることがほとんどです。決められた定期検診の頻度を守れていないと、保証が受けられない可能性があります。
インプラントの被せ物が事故で欠けてしまった場合など、保証期間内であれば治療費の負担なしや何割かだけで済むことが多いですが、定期検診を受けていないと全額自己負担になることもあります。
ご自宅でのケア方法
定期検診と同じくらい重要なのが、ご自宅での日々のケアです。
インプラントのホームケアは、天然の歯より丁寧かつ慎重に行う必要があります。定期検診では、患者様一人ひとりの口腔内の状態に合わせた歯磨き指導を行っています。
基本的なブラッシング
インプラントと歯茎の境目を特に丁寧に磨くことが重要です。柔らかめの歯ブラシを使用し、優しく小刻みに動かしながら磨きます。力を入れすぎると歯茎を傷つけてしまうため、注意が必要です。
歯間ブラシとフロスの使用
インプラントと隣の歯の間、インプラントと歯茎の境目は、歯ブラシだけでは汚れを完全に除去できません。歯間ブラシやフロスを使用して、細かい部分まで丁寧にケアすることが大切です。インプラント専用のフロスもありますので、使い方を含めて丁寧に指導させていただきます。
洗口液の活用
抗菌作用のある洗口液を併用することで、細菌の増殖を抑える効果が期待できます。ただし、洗口液だけでは汚れを除去することはできませんので、あくまでもブラッシングの補助として使用します。

まとめ
インプラントを長持ちさせるためには、定期検診と日々のホームケアが欠かせません。
定期検診では、歯周病の重症度検査、レントゲン撮影、プロフェッショナルケア、噛み合わせの調節、口腔内全体の確認という5つのポイントを中心にチェックしています。これらのチェックを定期的に行うことで、インプラント周囲炎を予防し、早期発見・早期治療が可能になります。
インプラントは適切なケアを行えば10年以上、場合によっては一生使えることもあります。せっかく高額な費用と時間をかけて行ったインプラント治療を無駄にしないためにも、予防歯科でのメンテナンスを継続していきましょう。
赤坂ONO Dental Clinicでは、患者様一人ひとりに合わせたオーダーメイドの治療とメンテナンスを提供しています。インプラントの定期検診やメンテナンスについてご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
詳しくは、赤坂ONO Dental Clinicの公式サイトをご覧ください。赤坂駅から徒歩1分、平日は22時まで、土日も18時まで診療しておりますので、お仕事帰りや週末のご来院も可能です。
監修者プロフィール
院長 小野 雄大(おの たけひろ)先生

略歴
– 2015年3月:岩手医科大学 歯科医師臨床研修 修了
– 医療法人(秋田)、岩手医科大学放射線科、神奈川県内医療法人などで幅広く勤務
– 2024年2月:赤坂ONO Dental Clinic 開業
診療スタンス
– 丁寧なカウンセリングを重視し、口腔内写真やレントゲンを用いて現在の状態をしっかり説明
– 患者さまに治療内容のメリット・デメリットを理解していただいた上で選択してもらう治療方針を実践
– 自身も歯科治療の経験があることから、「患者さまに寄り添う治療」を大切にしている

