根管治療の痛みと期間、費用の実際──専門医が解説する全知識
- 2025年8月12日
- 治療(歯内)
根管治療とは?歯の神経を取る治療の基本知識
歯の痛みで眠れない夜を過ごしたことはありませんか?
虫歯が進行して歯の神経(歯髄)まで達すると、激しい痛みを引き起こします。このような状態になると必要となるのが「根管治療」です。根管治療は歯の内部にある感染した神経や血管を取り除き、根の中を清掃・消毒して薬剤で密閉する治療法です。
しかし、多くの患者さんが「根管治療は痛い」「治療期間が長い」「費用が高い」といった不安を抱えています。
私は年間100本以上のインプラント症例を手がける歯科医師として、根管治療の重要性を日々実感しています。本記事では、根管治療の痛みや期間、費用について正確な情報をお伝えします。
治療に対する不安を和らげ、適切な判断ができるよう、専門医の視点から根管治療の全体像を解説していきましょう。
根管治療が必要になる症状とタイミング
「どんな症状があれば根管治療が必要なのか」を知ることは、早期発見・早期治療につながります。以下のような症状がある場合は、根管治療が必要なサインかもしれません。
要注意!これらの症状がある場合
- 激しい歯の痛み:ズキズキとした脈打つような痛みが続く
- 冷たいものや熱いものがしみる:特に冷たい刺激に長時間反応する
- 噛むと痛む:特定の歯に圧力をかけると痛みが生じる
- 歯茎の腫れや膿:歯の根元付近の歯茎が腫れたり、膿が出たりする
- 歯の変色:歯が灰色や黒っぽく変色している
これらの症状は、歯髄(神経や血管がある組織)に炎症や感染が起きている証拠です。放置すると症状が悪化するだけでなく、感染が顎の骨にまで広がる危険性があります。
痛みがなくても、定期検診で「神経まで達する深い虫歯」と診断された場合は、根管治療が必要になることがあります。
虫歯の進行と根管治療の必要性
虫歯は進行するにつれて、次のような段階を経ていきます。
- 初期(エナメル質の虫歯):痛みはほとんどなく、見た目の変化のみ
- 中期(象牙質の虫歯):冷たいものがしみる、甘いものがしみるなどの症状が出始める
- 後期(歯髄炎):神経に達し、強い痛みを伴う
- 末期(根尖性歯周炎):神経が壊死し、根の先に膿がたまる
後期以降の段階では、ほぼ確実に根管治療が必要になります。中期の段階でも、虫歯が神経に近づいている場合は、予防的に根管治療を行うことがあります。
どうですか?心当たりはありませんか?
症状に心当たりがある方は、早めに歯科医院を受診することをお勧めします。早期の治療ほど、成功率が高く、治療期間も短くなる傾向があります。
根管治療の流れと期間はどのくらい?
根管治療は一度の通院で終わるものではありません。複数回の通院が必要で、治療期間は症状や歯の状態によって異なります。一般的な根管治療の流れと期間について解説します。
標準的な根管治療の流れ
- 診断と検査:レントゲン撮影や痛みの状態を確認
- 麻酔と神経の除去:局所麻酔をして、感染した神経を取り除く
- 根管の清掃と形成:専用の器具で根管内を清掃し、形を整える
- 薬剤による消毒:根管内に薬剤を入れて消毒(1〜2週間)
- 根管充填:根管内を薬剤で完全に密閉
- 最終修復:被せ物や詰め物で歯を修復
この一連の流れは、通常3〜4回の通院で完了します。しかし、感染の程度や歯の状態によっては、さらに通院回数が増えることもあります。
治療期間の目安
根管治療の期間は、以下の要因によって大きく変わります。
- 前歯の場合:根管が1〜2本と比較的単純なため、1〜2ヶ月程度
- 小臼歯の場合:根管が1〜2本で、2〜3ヶ月程度
- 大臼歯の場合:根管が3〜4本と複雑なため、3〜4ヶ月程度
ただし、これはあくまで目安です。感染の程度や根管の形状、患者さんの状態によって、治療期間は前後します。
東京歯内クリニックの症例では、単純な症例で約1.5ヶ月、複雑な症例では約4〜5ヶ月かかったケースもあります。
根管治療は一度の治療で完了せず、複数回の通院が必要です。「早く終わらせたい」という気持ちは理解できますが、焦って治療を進めると再発のリスクが高まります。
じっくりと時間をかけて確実に治療を進めることが、長期的に見て最も効率的です。
根管治療の痛みは本当にひどいのか?
「根管治療は痛い」というイメージをお持ちの方は多いでしょう。しかし、現代の歯科治療技術の進歩により、痛みを最小限に抑えた治療が可能になっています。
治療中の痛みについて
根管治療は局所麻酔を使用して行うため、治療中の痛みはほとんどありません。麻酔が効いている間は、神経を取り除く作業も含めて、痛みを感じることはないでしょう。
ただし、強い炎症がある場合は、麻酔が効きにくいことがあります。そのような場合は、追加の麻酔や治療方法の工夫で対応します。
私の臨床経験では、適切な麻酔と丁寧な治療により、ほとんどの患者さんが「思ったより痛くなかった」と感じています。
治療後の痛みと対処法
治療後は、麻酔が切れると一時的に痛みや違和感を感じることがあります。これは治療による刺激で歯の周囲組織に炎症が起きているためです。
通常、この痛みは2〜3日程度で徐々に軽減していきます。市販の鎮痛剤で対応できる程度の痛みがほとんどです。
しかし、以下のような症状がある場合は、歯科医院に連絡することをお勧めします。
- 強い痛みが3日以上続く
- 痛みが徐々に強くなる
- 歯茎の腫れが悪化する
- 発熱を伴う
これらは、感染が広がっている可能性を示唆しています。早めの対応が必要です。
最近では、レーザーを用いた根管治療も行われています。レーザーを使用することで、根管内部の細菌をより効果的に除去でき、治療後の痛みや不快感を軽減できる可能性があります。
痛みに対する不安がある方は、治療前に歯科医師に相談してみてください。あなたの状態に合わせた痛みのコントロール方法を提案してくれるでしょう。
根管治療にかかる費用の実際
根管治療の費用は、保険診療か自由診療か、また歯の種類や治療の複雑さによって大きく異なります。実際の費用相場について詳しく解説します。
保険診療の場合の費用
保険診療での根管治療の費用は、3割負担の場合で以下のような目安となります。
- 単根管(前歯など):約2,000円〜3,000円
- 2根管(小臼歯など):約3,000円〜4,000円
- 3根管以上(大臼歯など):約4,000円〜5,000円
ただし、これは根管治療の基本料金であり、初診料、再診料、レントゲン撮影料、仮詰め料などが別途かかります。全体の治療費は、通院回数や追加処置によって変動します。
保険診療の場合、総額で1万円〜2万円程度が一般的です。
自由診療の場合の費用
自由診療(保険適用外)の根管治療は、より精密な機器や高品質な材料を使用するため、費用が高くなります。
- 前歯:約7万円〜10万円
- 小臼歯:約8万円〜12万円
- 大臼歯:約10万円〜15万円
東京歯内クリニックの症例では、根管治療単独で約18万円、外科的歯内療法を含む複雑な症例では約28万円かかったケースもあります。
自由診療の根管治療では、マイクロスコープやCTなどの精密機器を使用し、より確実な治療を目指します。また、通院回数が少なく済む場合もあります。
費用を抑えるポイント
根管治療の費用を抑えるためには、以下のポイントが重要です。
- 早期発見・早期治療:症状が軽いうちに治療を始めれば、治療が単純になり費用も抑えられます
- 定期検診の活用:定期的な検診で小さな虫歯を早期に発見することが重要です
- 医療費控除の活用:年間の医療費が一定額を超えると、確定申告で税金の還付を受けられます
根管治療は決して安い治療ではありませんが、歯を抜かずに残せるという点で、長期的に見れば費用対効果の高い治療と言えます。
費用面で不安がある場合は、治療前に歯科医師に相談し、支払い計画を立てることをお勧めします。
根管治療の成功率と失敗のリスク
根管治療は高度な技術を要する治療であり、100%の成功率を保証することはできません。治療の成功率や失敗のリスクについて理解しておくことが重要です。
根管治療の成功率
根管治療の成功率は、様々な要因によって左右されますが、一般的には以下のような統計があります。
- 初回の根管治療:約85〜95%
- 再根管治療(再治療):約70〜85%
成功率に影響する主な要因としては、以下のようなものがあります。
- 歯の状態(虫歯や感染の程度)
- 根管の形態(複雑さ)
- 治療技術と使用機器
- 患者さんの全身状態
特に、根管が複雑な形状をしている大臼歯や、長期間放置された感染では、成功率が低下する傾向があります。
失敗のリスクと対処法
根管治療が失敗するケースとしては、以下のようなものが考えられます。
- 見落とされた根管:特に大臼歯では、細い根管が見落とされることがあります
- 不完全な根管充填:根管の先端まで完全に密閉できていない場合
- 根の亀裂や破折:治療中や治療後に歯根に亀裂が入るケース
- 再感染:治療後に細菌が再び侵入するケース
根管治療が失敗した場合の対処法としては、以下のような選択肢があります。
- 再根管治療:再度根管治療をやり直す
- 外科的歯内療法:歯茎を切開して根の先端部分を直接治療する
- 抜歯とインプラント:保存が難しい場合は抜歯し、インプラントなどで補う
東京歯内クリニックの症例では、通常の根管治療で改善しなかった症例に対して外科的歯内療法を行い、歯を保存できたケースが報告されています。
根管治療の成功率を高めるためには、専門的な知識と技術、そして適切な機器の使用が不可欠です。特に難しいケースでは、根管治療を専門とする歯科医師に相談することも選択肢の一つです。
根管治療後のケアと注意点
根管治療が終わった後も、適切なケアが必要です。治療後の歯を長持ちさせるための注意点を解説します。
治療直後の注意点
根管治療直後は、以下の点に注意しましょう。
- 硬いものを避ける:治療中の歯は仮の詰め物で保護されており、硬いものを噛むと破折するリスクがあります
- 痛み止めの服用:医師の指示に従って、必要に応じて痛み止めを服用しましょう
- 異常を感じたら連絡:強い痛みや腫れが続く場合は、すぐに歯科医院に連絡しましょう
特に治療途中の段階では、歯が弱くなっています。無理な力をかけないよう注意が必要です。
長期的なケアのポイント
根管治療後の歯を長持ちさせるためには、以下のようなケアが重要です。
- 適切な最終修復:根管治療後は、歯の強度が低下しています。適切な被せ物(クラウン)で保護することが重要です
- 定期的な検診:半年に1回程度の定期検診で、問題がないか確認しましょう
- 丁寧な歯磨き:根管治療をした歯も、虫歯や歯周病のリスクがあります。丁寧な歯磨きを心がけましょう
- 過度の力を避ける:歯ぎしりや食いしばりがある場合は、ナイトガードの使用を検討しましょう
根管治療をした歯は、生きた歯と比べると若干もろくなります。しかし、適切なケアを行えば、長期間機能を維持することが可能です。
歯を大切にしていますか?
根管治療は最後の砦です。そこまで至らないよう、日頃からの予防ケアが何より重要です。定期的な検診と丁寧な歯磨きで、健康な歯を守りましょう。
まとめ:根管治療で歯を守るために知っておくべきこと
根管治療は、歯を抜かずに残すための重要な治療法です。本記事で解説した内容をまとめると、以下のようになります。
- 根管治療の必要性:激しい痛みや歯茎の腫れなどの症状がある場合、神経まで達した虫歯には根管治療が必要です
- 治療期間:通常3〜4回の通院で、歯の種類や状態によって1〜4ヶ月程度かかります
- 痛みについて:適切な麻酔と技術により、治療中の痛みはほとんどありません。治療後も一時的な痛みは数日で軽減します
- 費用:保険診療で1万円〜2万円程度、自由診療では7万円〜15万円程度が目安です
- 成功率とリスク:初回治療で85〜95%の成功率があり、失敗した場合も再治療や外科的治療の選択肢があります
- 治療後のケア:適切な被せ物と定期的なメンテナンスで、治療した歯を長持ちさせることが可能です
根管治療は決して恐れるものではありません。現代の歯科医療技術の進歩により、痛みを最小限に抑えた効果的な治療が可能になっています。
大切なのは、症状に気づいたらすぐに歯科医院を受診することです。早期の治療ほど、成功率が高く、治療期間も短くなります。
私たち赤坂ONO Dental Clinicでは、マイクロスコープやCTなどの最新機器を導入し、精密な根管治療を提供しています。歯の痛みや不安がある方は、お気軽にご相談ください。
あなたの大切な歯を守るために、専門的な知識と技術で最適な治療をご提案します。
監修者プロフィール
院長 小野 雄大(おの たけひろ)先生
略歴
– 2015年3月:岩手医科大学 歯科医師臨床研修 修了
– 医療法人(秋田)、岩手医科大学放射線科、神奈川県内医療法人などで幅広く勤務
– 2024年2月:赤坂ONO Dental Clinic 開業
診療スタンス
– 丁寧なカウンセリングを重視し、口腔内写真やレントゲンを用いて現在の状態をしっかり説明
– 患者さまに治療内容のメリット・デメリットを理解していただいた上で選択してもらう治療方針を実践
– 自身も歯科治療の経験があることから、「患者さまに寄り添う治療」を大切にしている