喫煙・歯周病の方のインプラント治療|リスクを減らすために整えるべきお口の環境
- 2025年12月16日
- インプラント
インプラント治療を検討されている方の中には、喫煙習慣や歯周病の既往があり、治療を受けられるか不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
確かに、喫煙や歯周病はインプラント治療において重要なリスク因子となります。しかし、適切な準備と管理を行うことで、これらのリスクを大幅に軽減し、治療の成功率を高めることが可能です。
私は赤坂ONO Dental Clinicで院長を務める小野雄大と申します。これまで多くの患者様のインプラント治療に携わってきた経験から、喫煙習慣や歯周病をお持ちの方でも、しっかりとした準備と継続的なケアによって、インプラント治療を成功させることができると確信しています。この記事では、喫煙・歯周病の方がインプラント治療を受ける際に知っておくべき基本から応用までを、わかりやすく解説していきます。

喫煙がインプラント治療に及ぼす影響とリスク
喫煙はインプラント治療において、非常に大きな影響を及ぼします。
タバコに含まれる「ニコチン」や「一酸化炭素」といった有害物質は、お口の中の環境を悪化させ、インプラント治療の成功率を低下させる主要な原因となるのです。日本歯周病学会の調査によれば、喫煙者のインプラント失敗率は非喫煙者の約2倍にのぼり、合併症の発生率も喫煙者が46%に対して非喫煙者が31%と、有意に高いことが報告されています。
血流悪化によるインプラントと骨の結合阻害
ニコチンには血管を収縮させる作用があります。これにより、インプラントを埋入した部位への酸素や栄養の供給が不足してしまうのです。インプラント治療の成功には、顎の骨とインプラント体がしっかりと結合することが不可欠ですが、血流が悪化すると骨の増殖が妨げられ、結合が不十分になる可能性が高まります。最悪の場合、インプラント体が脱落してしまい、再手術が必要になることもあります。
インプラント周囲炎のリスク増大
喫煙は免疫力を低下させるため、細菌に対する抵抗力が弱まります。インプラント周囲の組織が炎症を起こした場合、「インプラント周囲炎」を発症するリスクが高まるのです。ある研究では、喫煙者のインプラント周囲炎の発症率は17.9%であるのに対し、非喫煙者では6.0%と、約3倍の差があることが明らかになっています。インプラント周囲炎が進行すると、インプラントを支える骨が溶けてしまい、最終的にはインプラント体の脱落につながります。
唾液分泌量の低下と口腔環境の悪化
ニコチンは唾液腺の働きを抑制し、唾液の分泌量を減少させます。
唾液には口腔内を清潔に保つ自浄作用や、細菌の増殖を抑える抗菌作用、酸性を中和する作用があるため、唾液が減少すると口腔内の細菌が増殖しやすくなり、虫歯や歯周病のリスクが高まります。また、タバコに含まれる「タール」はインプラントの表面や周辺の歯に付着し、ざらついた表面を作ることで歯垢が付きやすい環境を作り出してしまいます。
手術の失敗率と治療期間への影響
喫煙者の場合、傷の治りが遅く、細菌感染を起こしやすいという特徴があります。そのため、インプラント手術では、より慎重なアプローチが必要となり、治療期間が長くなる傾向にあります。基本的なインプラント手術には1回法と2回法がありますが、喫煙者の場合は感染リスクを考慮して2回法が選択されることが多く、治療完了までに時間がかかります。

歯周病とインプラント治療の関係性
歯周病は、インプラント治療において喫煙と並ぶ重要なリスク因子です。
現在、30歳以上の成人の約80%が歯周病にかかっており、歯の喪失原因の第1位となっています。歯周病は歯を支える骨を溶かす病気であり、インプラント治療においても同様のメカニズムで問題を引き起こす可能性があるのです。
歯周病の基本的なメカニズム
歯周病の原因は、歯に付着した細菌の塊である「歯垢」です。歯垢を取り除かなければ、歯周病の進行を食い止めることはできません。歯垢が蓄積すると、歯茎に炎症が起こり、やがて歯を支える骨まで溶かしてしまいます。歯周病の治療では、患者様自身が行う「セルフケア」と、歯科医院で行う専門的な「プロフェッショナルケア」がセットになった「歯周基本治療」が中心となります。
インプラント周囲炎との類似性
インプラント周囲炎は、歯周病と非常に似た症状を示します。インプラント周囲の歯茎が炎症を起こし、進行するとインプラントを支える骨が溶けていくのです。特に注意すべきは、インプラントには天然歯にある「歯根膜」がないため、細菌が侵入した際の防御機能が弱く、炎症の進行が早いという点です。重度の歯周炎患者においては、インプラント周囲炎の発症率が特に高く、ある研究では88.9%がStage IVの歯周炎患者に認められたと報告されています。
歯周病治療の重要性
インプラント治療を成功させるためには、事前に歯周病をしっかりと治療し、口腔環境を整えることが不可欠です。歯周病が残っている状態でインプラント治療を行うと、インプラント周囲炎のリスクが大幅に高まります。当院では、インプラント治療前に必ず歯周病の検査と治療を行い、口腔内の健康状態を最適化してから治療を開始します。
インプラント治療前に整えるべき口腔環境
インプラント治療の成功には、治療前の準備が極めて重要です。
特に喫煙習慣や歯周病をお持ちの方は、以下の点に注意して口腔環境を整える必要があります。
禁煙サポートの活用
インプラント治療を成功させるためには、少なくとも治療期間中の禁煙が必須です。できれば治療後も禁煙を継続することが望ましいでしょう。ニコチンの依存性により、自力での禁煙が難しい場合もあります。そのような場合は、禁煙外来やサポートプログラムを積極的に活用することをお勧めします。当院でも、禁煙に向けた指導やサポート情報の提供を行っています。
なお、電子タバコや加熱式タバコについても、ニコチンや有害物質が含まれている場合は同様に禁煙が必要です。紙タバコに比べて害が少ないとされていますが、インプラント治療においては悪影響を及ぼす可能性があるため、基本的にはすべてのタバコ製品の使用を避けることが推奨されます。
徹底した歯周病治療
歯周病がある場合は、インプラント治療前に必ず治療を完了させる必要があります。歯周基本治療として、歯垢や歯石の除去、歯の根の表面の滑沢化などを行います。歯科医院でのプロフェッショナルケアに加えて、ご自宅でのセルフケアも非常に重要です。正しいブラッシング方法を習得し、毎日のケアを徹底することで、口腔内の細菌を効果的にコントロールできます。
口腔内の総合的な健康状態の改善
虫歯や他の歯の問題がある場合も、インプラント治療前に治療を完了させることが重要です。口腔内全体の健康状態が良好であることが、インプラント治療の成功率を高めます。当院では、治療開始前に口腔内写真やレントゲンを撮影し、現在の病態を詳しく説明した上で、最適な治療計画を立てています。
喫煙習慣を考慮した治療計画
喫煙習慣がある方の場合、より慎重な治療計画が必要となります。禁煙期間の設定、治療方法の選択、術後のフォローアップ体制など、個々の状況に応じたカスタマイズされた計画を立てることが重要です。当院では、患者様一人ひとりの背景を考慮し、最適な治療アプローチをご提案しています。

インプラント治療後の継続的なケアとメンテナンス
インプラント治療は、手術が終わったら完了というわけではありません。
むしろ、治療後のケアとメンテナンスこそが、インプラントを長期的に維持するための鍵となります。特に喫煙習慣や歯周病の既往がある方は、より念入りなケアが必要です。
治療後も継続すべき禁煙
インプラント手術の2〜3週間前から、骨との結合が確認できる3〜6ヶ月後までは絶対に禁煙が必要です。しかし、理想的には治療後も禁煙を継続することが強く推奨されます。治療後に喫煙を再開すると、インプラント周囲炎のリスクが高まり、インプラントの寿命が短くなる可能性があります。喫煙はインプラント保証の対象外となることも多いため、長期的な視点で禁煙を継続することが重要です。
定期的なメンテナンスの重要性
インプラント治療後は、定期的な検診とメンテナンスが不可欠です。
インプラント周囲炎は初期段階では自覚症状が乏しく、気づいたときには進行していることも少なくありません。定期的なメンテナンスを受けることで、問題を早期に発見し、適切な対処を行うことができます。メンテナンスを怠ると、インプラント周囲炎が進行してインプラントを維持できなくなったり、保証を受けられなくなったり、残存歯にも悪影響を及ぼす可能性があります。
日々のセルフケアの実践
毎日のセルフケアは、インプラントを長持ちさせるための基本です。ブラシの毛先を磨きたい部分に確実に当て、小刻みに動かしながら丁寧に磨くことが重要です。力を入れすぎると歯ブラシの毛先が開いてしまい、効果的に歯垢を除去できません。1ヶ所につき10〜20回程度、時間をかけてゆっくりと磨きましょう。特に寝る前の丁寧なブラッシングが効果的です。
口腔内環境の継続的な管理
唾液の分泌を促進し、口腔内の自浄作用を高めることも大切です。十分な水分補給を心がけ、バランスの取れた食事を摂ることで、口腔内環境を良好に保つことができます。また、ストレス管理や十分な睡眠も、免疫力を維持し、口腔内の健康を守るために重要な要素となります。

まとめ:喫煙・歯周病の方でもインプラント治療は可能です
喫煙習慣や歯周病をお持ちの方でも、適切な準備と管理を行うことで、インプラント治療を成功させることは十分に可能です。
重要なのは、治療前にしっかりと禁煙し、歯周病を治療して口腔環境を整えること、そして治療後も継続的なケアとメンテナンスを怠らないことです。当院では、患者様一人ひとりの状況に合わせた治療計画を立て、丁寧なカウンセリングと説明を通じて、安心して治療を受けていただける環境を整えています。
インプラント治療に関して不安や疑問がある方は、まずは一度ご相談ください。口腔内写真やレントゲンを撮影し、現在の状態を詳しく確認した上で、最適な治療方法をご提案いたします。決して押し付ける治療はせず、患者様ご自身が納得して選択できる治療を提供することをお約束します。
赤坂駅から徒歩1分という好立地で、平日は22時まで、土日も18時まで診療を行っておりますので、お仕事帰りや休日にも通院しやすい環境です。インプラント治療をお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
詳細はこちら:赤坂ONO Dental Clinic
監修者プロフィール
院長 小野 雄大(おの たけひろ)先生

略歴
– 2015年3月:岩手医科大学 歯科医師臨床研修 修了
– 医療法人(秋田)、岩手医科大学放射線科、神奈川県内医療法人などで幅広く勤務
– 2024年2月:赤坂ONO Dental Clinic 開業
診療スタンス
– 丁寧なカウンセリングを重視し、口腔内写真やレントゲンを用いて現在の状態をしっかり説明
– 患者さまに治療内容のメリット・デメリットを理解していただいた上で選択してもらう治療方針を実践
– 自身も歯科治療の経験があることから、「患者さまに寄り添う治療」を大切にしている

