インプラントが長持ちする人・しない人|寿命を左右する生活習慣と予防歯科の役割
- 2025年12月16日
- インプラント
インプラント治療を受けた患者さまから、よくこんな質問をいただきます。
「インプラントって、一生持つんですよね?」
実は、この答えは「イエス」でもあり「ノー」でもあるのです。インプラント自体はチタン製で非常に耐久性が高く、理論的には半永久的に機能する可能性を持っています。しかし、実際の臨床では平均寿命が10〜15年程度といわれており、この差を生むのが「日々の生活習慣」と「予防歯科の取り組み」なのです。同じインプラント治療を受けても、20年以上快適に使い続けられる方もいれば、わずか数年で問題が生じてしまう方もいます。その違いはどこにあるのでしょうか?
この記事では、赤坂ONO Dental Clinicでの臨床経験をもとに、インプラントが長持ちする人・しない人の特徴、そして寿命を左右する生活習慣と予防歯科の役割について、基本から応用まで詳しく解説していきます。

インプラントの寿命を決める「3つの要因」
インプラントの寿命は、大きく分けて3つの要因によって左右されます。
まず1つ目は「インプラント周囲の組織の健康状態」です。インプラントは人工物ですが、それを支えているのは生きた骨と歯茎です。これらの組織が健康でなければ、どんなに優れたインプラントでも長持ちしません。特に注意すべきなのが「インプラント周囲炎」という病気で、これは天然歯の歯周病に似た炎症が、インプラント周囲の組織に起こる状態を指します。
2つ目は「咬合力のコントロール」です。インプラントには天然歯のような歯根膜というクッション機能がないため、過度な力が直接骨に伝わってしまいます。歯ぎしりや食いしばりの習慣がある方、硬いものを頻繁に噛む方は、インプラントに過剰な負担をかけている可能性があります。
そして3つ目が「全身の健康状態」です。糖尿病や高血圧などの生活習慣病、喫煙習慣、免疫力の低下などは、すべてインプラントの寿命に影響を与えます。口腔内だけでなく、体全体の健康管理が重要なのです。
インプラント周囲炎がもたらすリスク
インプラント周囲炎は、インプラントの寿命を大きく縮める最大の敵といえます。
この病気の怖いところは、初期段階では自覚症状がほとんどないという点です。天然歯の歯周病であれば、歯がグラグラしてくるため比較的早く気づけますが、インプラントは骨にしっかり固定されているため、炎症が進行しても動きません。気づいたときには、すでに骨が大きく溶けてしまっているケースも少なくありません。
原因の多くはプラークや歯石の蓄積です。「インプラントは人工の歯だから虫歯にならない」と油断して、清掃を怠ってしまう方がいらっしゃいます。確かにインプラント自体は虫歯になりませんが、周囲の組織には細菌が増殖し、炎症を引き起こします。進行すると、インプラントを支える骨が徐々に失われ、最終的には脱落に至ることもあるのです。
さらに、インプラント周囲の組織には天然歯のような歯根膜が存在しないため、炎症が直接骨に及びやすく、進行スピードが速いという特徴があります。一度吸収された骨は自然回復が困難で、治療も複雑になります。だからこそ、予防が何より重要なのです。
全身疾患とインプラントの関係
糖尿病を患っている方は、特に注意が必要です。
高血糖の状態が続くと、組織の修復力が低下し、感染に対する抵抗力も弱まります。これにより、インプラント周囲炎のリスクが高まるだけでなく、手術後のオッセオインテグレーション(骨とインプラントの結合)も阻害される可能性があります。糖尿病の方がインプラント治療を受ける場合は、血糖値を適切にコントロールすることが前提となります。
また、高血圧や骨粗しょう症などの持病がある方も、医師と相談しながら適切に管理することが大切です。特に骨粗しょう症の治療薬の中には、顎骨壊死のリスクを高めるものもあるため、事前に歯科医師に伝えておく必要があります。

インプラントが長持ちしない人の「5つの生活習慣」
長年の臨床経験から、インプラントが早期にトラブルを起こす方には、いくつかの共通した生活習慣があることがわかっています。
1. 歯磨きを怠る・不十分なセルフケア
最も多いのが、この習慣です。
「インプラントは人工だから大丈夫」という誤解から、天然歯よりも清掃が疎かになってしまう方がいらっしゃいます。しかし実際には、インプラントこそ丁寧なケアが必要なのです。歯ブラシだけでは不十分で、デンタルフロスや歯間ブラシ、スーパーフロスなどを併用して、インプラントと歯茎の境目(アバットメント周囲)のプラークをきちんと除去することが重要です。
特にインプラントの周囲は、天然歯よりもプラークが蓄積しやすい構造になっています。毎日の適切な歯磨きが、インプラントを長持ちさせるための最も基本的で、最も重要なポイントなのです。
2. 喫煙習慣を続ける
タバコはインプラントにとって大敵です。
ニコチンは血管を収縮させ、歯茎や骨への血流を減少させます。これにより酸素や栄養の供給が不十分となり、手術後のオッセオインテグレーションが阻害されます。さらに一酸化炭素は赤血球の酸素運搬能力を低下させ、組織修復を遅らせます。喫煙者は免疫応答も低下するため、細菌感染に対する抵抗力が弱まり、インプラント周囲炎の発症率や進行速度が高くなることが知られています。
実際、喫煙者のインプラント成功率は非喫煙者に比べて明らかに低く、失敗するリスクが高いというデータもあります。インプラントを長持ちさせるためには、禁煙を真剣に検討することが重要です。加熱式タバコや電子タバコも有害物質を含み、完全に安全とはいえません。
3. 歯ぎしり・食いしばりを放置する
夜間の歯ぎしりや、日中の無意識な食いしばり。
これらの習慣は、インプラントに過度な負荷をかけます。インプラントには天然歯のようなクッション機能がないため、強い力が直接骨に伝わってしまいます。その結果、インプラントのネジが緩んだり、最悪の場合は破損することもあります。「朝起きると顎が疲れている」「頭痛がある」という方は、歯ぎしりや食いしばりの可能性があります。
ナイトガード(マウスピース)を装着することで、インプラントへのダメージを軽減できます。自分では気づかない癖であることも多いため、歯科医院で相談してみることをおすすめします。
4. 硬いものを頻繁に食べる
インプラントは天然歯のように強く噛めるといわれますが、無理は禁物です。
氷、ナッツ、硬いせんべい、フランスパンの端など、日常的に硬質食品を噛む習慣は、インプラント体や上部構造(被せ物)に過剰な咬合力を与えます。被せ物が欠けたり、インプラントのネジが緩んだりするリスクが高まります。特にインプラントは力が直接骨に伝わりやすいため、骨吸収を招く恐れもあります。食べ物の選び方には気をつけましょう。
5. 定期的な健診を受けない
「痛みがないから大丈夫」と思って、歯科医院での健診を怠っていませんか?
インプラントは異常があっても初期段階では自覚症状が少ないのが特徴です。定期健診では、インプラント周囲炎の早期発見・予防ができます。プロのクリーニングを受けることで、家庭では落とせない歯石や沈着物を徹底的に除去し、炎症を未然に防ぐことができます。最低でも3〜6ヶ月に1回は歯科医院でチェックを受けることで、インプラントの寿命を大きく延ばすことができます。

インプラントを長持ちさせる「予防歯科」の役割
では、具体的にどのような取り組みが、インプラントの寿命を延ばすのでしょうか?
予防歯科の役割は、単に「問題が起きてから治療する」のではなく、「問題が起きないように予防する」ことにあります。インプラント治療後の予防歯科は、大きく分けて「患者さまご自身によるセルフケア」と「歯科医院でのプロフェッショナルケア」の2つの柱から成り立っています。
セルフケアの基本と応用
正しい歯磨きを習慣化することが、すべての基本です。
「歯磨きはちゃんとしているつもりだけど…」という方は多いのですが、実際には磨き残しがあるケースがほとんどです。特にインプラントと歯茎の境目は、通常の歯ブラシだけでは不十分な場合があります。フロスや歯間ブラシ、スーパーフロスなどを併用し、汚れをきちんと除去することが効果的です。
また、歯磨きのタイミングも重要です。食後すぐに磨くのが理想的ですが、難しい場合は就寝前の歯磨きを特に丁寧に行いましょう。夜間は唾液の分泌が減り、細菌が増殖しやすい環境になるためです。電動歯ブラシや音波歯ブラシを使用するのも効果的ですが、正しい使い方を歯科医院で指導してもらうことをおすすめします。
プロフェッショナルケアの重要性
どんなに丁寧にセルフケアをしていても、家庭では落とせない汚れがあります。
歯科医院でのプロフェッショナルクリーニング(PMTC)では、専用の器具を使って歯石や沈着物を除去し、インプラント周囲を徹底的にきれいにします。また、レントゲン撮影や口腔内診査を通じて、骨の状態やインプラント周囲の組織の健康状態をチェックします。これにより、問題の早期発見が可能になります。
当院では、口腔内カメラを使用して患者さまご自身の目で状態を確認していただきながら、現在の病態説明と予防方法の提案を行っています。視覚的に理解することで、セルフケアのモチベーション向上にもつながります。
栄養管理と生活習慣の改善
口腔ケアだけでなく、全身の健康管理も重要です。
カルシウムやビタミンDは骨代謝に不可欠な栄養素であり、不足すると顎骨の維持に悪影響を及ぼします。栄養バランスを整え、抗酸化作用のあるビタミンCやポリフェノールも併せて摂取すると、歯茎の健康維持にも役立ちます。また、砂糖を多く含む食品や頻繁な間食は、口腔内のpHを低下させ、酸性環境を長時間維持させます。これによりプラーク中の細菌が増殖し、インプラント周囲炎のリスクが上昇します。
規則正しい生活リズム、十分な睡眠、ストレス管理なども、免疫力を維持するために大切です。慢性的なストレスは免疫力を低下させ、炎症のリスクを高めます。
赤坂ONO Dental Clinicでの予防歯科アプローチ
当院では、インプラント治療後の長期的なサポートを重視しています。
治療が終わったら終わりではなく、そこからが本当のお付き合いの始まりだと考えています。カウンセリングを重視し、患者さま一人ひとりの背景や生活習慣を考慮した、オーダーメイドの予防プログラムを提案しています。口腔内写真やレントゲンを一緒に見ながら、現在の状態を詳しく説明し、最適なケア方法をお伝えします。
また、最新機器を導入した精密治療と、クラスB滅菌器を使用した世界基準の感染対策により、安心して通院していただける環境を整えています。赤坂駅から徒歩1分という好立地と、平日は22時まで、土日も18時まで診療を行っているため、お仕事終わりや平日通えない方にも通院しやすいクリニックです。
インプラント治療を成功させることはもちろん、それ以降のメンテナンスにも力を入れ、患者さまの生涯にわたる健康をサポートしていきたいと考えています。
まとめ|インプラントの寿命は「あなた次第」
インプラントが長持ちするかどうかは、日々の生活習慣と予防歯科への取り組みで大きく変わります。
丁寧なセルフケア、定期的なプロフェッショナルケア、禁煙、適切な食生活、全身の健康管理。これらすべてが、インプラントの寿命を左右する重要な要素です。「インプラントは一生持つ」という保証はありませんが、正しいケアを続けることで、20年、30年と長く快適に使い続けることは十分に可能です。
逆に、どんなに優れたインプラント治療を受けても、その後のケアを怠れば、わずか数年でトラブルが起こる可能性もあります。インプラントの寿命は、まさに「あなた次第」なのです。
当院では、インプラント治療後も長期にわたってサポートさせていただきます。少しでも不安なことがあれば、いつでもご相談ください。一緒に、健康な口腔環境を守っていきましょう。
インプラント治療や予防歯科について、もっと詳しく知りたい方は、ぜひ一度ご相談ください。あなたに最適なケアプランをご提案いたします。
詳細はこちら:赤坂ONO Dental Clinic
監修者プロフィール
院長 小野 雄大(おの たけひろ)先生

略歴
– 2015年3月:岩手医科大学 歯科医師臨床研修 修了
– 医療法人(秋田)、岩手医科大学放射線科、神奈川県内医療法人などで幅広く勤務
– 2024年2月:赤坂ONO Dental Clinic 開業
診療スタンス
– 丁寧なカウンセリングを重視し、口腔内写真やレントゲンを用いて現在の状態をしっかり説明
– 患者さまに治療内容のメリット・デメリットを理解していただいた上で選択してもらう治療方針を実践
– 自身も歯科治療の経験があることから、「患者さまに寄り添う治療」を大切にしている

