歯ぎしり・食いしばりが歯を壊す?予防歯科でできる対策と治療法
- 2025年11月17日
- 予防歯科
朝起きたときの顎の違和感、その原因は?
「朝起きると顎がだるい」「家族から歯ぎしりを指摘された」そんな経験はありませんか?
実は、多くの方が無意識のうちに歯ぎしりや食いしばりをしています。睡眠中だけでなく、日中の集中しているときにも起こることがあり、自覚していない方がほとんどです。
歯ぎしりや食いしばりは、医学用語では「ブラキシズム」と呼ばれる症状です。放置すると、歯がすり減ったり、ひび割れたり、最悪の場合は歯が割れて抜歯が必要になることもあります。実際、歯の抜歯原因の第3位が「歯の破折」であり、その主な理由が咬む力の過剰な負担なのです。
この記事では、歯ぎしり・食いしばりの種類や原因、そして予防歯科でできる対策と治療法について、詳しく解説していきます。
歯ぎしり・食いしばりの3つのタイプとは?
歯ぎしりや食いしばりには、大きく分けて3つのタイプがあります。それぞれ特徴が異なり、歯や顎に与える影響も違います。
グライディング(歯ぎしり)
上下の歯を強くかみしめて左右にギリギリと擦り合わせるタイプです。
「歯ぎしり」と聞いて多くの方がイメージするのが、このタイプでしょう。睡眠中に特に顕著に現れ、ギリギリという激しい音が鳴るため、家族にも気づいてもらいやすい症状です。歯を左右に強く動かすため、歯の表面にあるエナメル質が削れて、その内側の象牙質が見えてしまうほど、歯のすり減りが強い方もいらっしゃいます。
また、歯の詰め物が取れたり歯が割れたりすることもあり、歯を支えている骨にもダメージを与えてしまいます。
クレンチング(食いしばり)
上下の歯をギューっと強くかみしめたり食いしばったりするタイプです。
夜、寝ているときにも起こりますが、昼間でも起こります。強くかみしめているため、歯がすれるような音はでません。そのため、本人も周囲の方もなかなか気づきにくい症状です。かみしめている時間が長いと、歯や歯茎、筋肉などにも負担がかかります。
咬筋や側頭筋などの筋肉に痛みがでたり、骨隆起(骨が膨らんでこぶ状になったもの)ができやすくなったりします。歯が割れやすいのもこのタイプの方にみられる症状です。
タッピング
上下の歯を「カチカチ」と音をだして鳴らすようなタイプです。
歯を軽く打ち合わせるような動作が主体となりますが、何度も繰り返すため歯にヒビ割れを起こす場合があります。グライディングやクレンチングにくらべると、歯や顎にかかるダメージは比較的小さいとされていますが、放置すると徐々に影響が蓄積されていきます。

歯ぎしり・食いしばりの原因を知ろう
歯ぎしりや食いしばりの原因は一つではなく、複数の要因が絡み合って起こることが分かっています。主な原因を理解することで、適切な対策を立てることができます。
ストレスや精神的な要因
歯ぎしりのおもな原因は、強いストレスによるものといわれています。
仕事上のプレッシャー、人間関係の悩み、経済的な不安、生活環境の変化など、日常生活の中で抱えるストレスや不安が、無意識のうちに歯に強い力をかけさせる要因の一つとなります。寝ている間に歯ぎしりや食いしばりをすることで、ストレスや不安を無意識のうちに解消していると考えられています。
実は、リラックスしている時には、上下の歯が接触しない状態が理想的です。日中は「上の歯と下の歯を離す」ことを意識するだけでも、負担が軽減されます。

噛み合わせの問題
歯並びや噛み合わせが悪いことも、歯ぎしり・食いしばりの重要な原因の一つです。
歯をかみ合わせたときに、一部の歯が強く当たっていたり、歯の詰め物や被せ物の高さが合っていなかったりすると、かみ合わせが安定しないため、歯ぎしりの原因となることがあります。前歯の噛み合わせが深すぎる、奥歯の噛み合わせが合っていない、歯並びが乱れている、親知らずがまっすぐに生えていないなどの状態が関係していることが多いです。
口腔内スキャナを使用して、ご自身の歯並びや噛み合わせのバランスを視覚的に確認することも可能です。
生活習慣の影響
飲酒、喫煙、カフェインの過剰摂取などが歯ぎしりや食いしばりのリスク因子となることがあります。
主に睡眠の質が低下することがストレスとなり、歯ぎしりや食いしばりが起こるといわれています。また、寝る前のスマートフォンやパソコンの使用も、睡眠の質を低下させる要因となります。
寝具が合わない
高い枕を使用していたり合わない枕を使用していたりする方は、歯ぎしりが起こりやすくなるといわれています。
高い枕を使って寝ると、首に角度がつき、うつむいた状態になりやすいため、奥歯をかみしめるような姿勢になりやすくなります。寝るときによい状態の姿勢をとれるような枕を選ぶとよいでしょう。睡眠が浅いことが歯ぎしりの要因のうちのひとつであると解明されてきています。
集中している時間が長い
人は何かに集中するあまり、歯を食いしばることがあります。
歯を食いしばることで、集中力が増し力を発揮しようとするからです。運動や肉体労働だけでなく、何かほかのことに夢中になっているときも、集中力をあげるために無意識のうちに歯を食いしばっていることがあります。
放置すると起こる健康への影響
歯ぎしりや食いしばりを放置すると、様々な健康上の問題が引き起こされる可能性があります。
口腔内だけでなく、全身にも影響が及ぶことがあるため、早期発見と適切な対策が重要です。
歯への影響
エナメル質の損傷による知覚過敏、歯の摩耗、欠け、ひび割れ、歯の動揺などが起こります。
ひどくなると、歯の表面にあるエナメル質が削れて、その内側の象牙質が見えてしまうほど、歯のすり減りが強い方もいらっしゃいます。また、歯の詰め物が取れたり歯が割れたりすることもあります。歯の根元が欠けているところができることもあり、これは「くさび状欠損」と呼ばれます。
顎への影響
顎関節症の発症や悪化、顎の痛み、開口障害、顎関節音などが起こります。
顎関節に負担をかけて、顎関節症の原因となることがあります。重症化すると、顎関節の変形や骨の破壊につながることもあります。口を開けるとカクンカクン音が鳴ることもあります。
筋肉への影響
顔面、首、肩の筋肉が緊張し、頭痛、肩こり、めまいなどを引き起こすことがあります。
咬筋や側頭筋などの筋肉に痛みがでたり、慢性的な頭痛や肩こりにつながったりします。また、エラの張り出し、顔の歪み、ほうれい線の悪化など、顔の形が変わってしまうこともあります。
睡眠への影響
睡眠の質が低下し、日中の眠気や集中力低下につながることがあります。
また、睡眠時無呼吸症候群を悪化させる可能性もあります。睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が止まる病気で、歯ぎしり・食いしばりを合併することがあります。
予防歯科でできる対策と治療法
歯ぎしりや食いしばりは、早期に発見し、適切な治療を行うことで、症状の悪化を防ぎ、健康な歯と顎を守ることができます。
当院では、患者様の症状や原因に合わせて、以下のような診断と治療法・対策をご提案しています。
マウスピース(ナイトガード)による治療
睡眠中に装着することで、歯や顎への負担を軽減します。
患者様に合ったマウスピースをオーダーメイドで作成し、調整も行います。歯科医院でのクリーニングは完全に汚れを落とし、スッキリした爽快感、口臭抑制、むし歯・歯周病予防につながります。マウスピースは症状の緩和(特に歯のすり減りや知覚過敏のような症状)を目的に使うことがよくありますが、根本治療ではないため、他の対策と組み合わせることが重要です。
噛み合わせの調整
噛み合わせの悪さが原因の場合は、矯正治療や補綴治療などを行い、噛み合わせを改善します。
歯をかみ合わせたときに、一部の歯が強く当たっていたり、歯の詰め物や被せ物の高さが合っていなかったりする場合、調整することで歯ぎしりや食いしばりの軽減が期待できます。
ボツリヌス治療
筋肉の緊張を緩和し、歯ぎしり・食いしばりを軽減する新しい治療法です。
顎の周囲、つまりエラの周辺には、咬筋とよばれる筋肉があります。この咬筋は食べ物を咀嚼するのに使う筋肉で、ずっと使い続けているがゆえに、発達しやすい筋肉です。ボツリヌス注射は、咬筋に注射することで筋肉の動きを抑制する効果があります。筋肉は使わなければその分萎縮する性質があるので、ボツリヌスで咬筋の動きを抑えると、太くなりすぎてしまった咬筋を細くすることができます。
その結果、次第に咬合力が適正化され、エラが目立たなくなっていきます。施術後、数日から徐々に食いしばりの改善や小顔効果を感じることができ、さらに1ヶ月ほど経過すると、フェイスラインに顕著な変化が現れてきます。効果は3〜6ヶ月程度が目安で、継続治療で持続期間が延びるケースもあります。
生活習慣改善のアドバイス
ストレス管理、リラックス法、睡眠環境の改善、食生活の改善など、日常生活でできる対策をご提案します。
日頃の意識の積み重ねに加えて、歯科医院で適切なアドバイスや睡眠時の歯ぎしり・食いしばり予防のためのマウスピースを取り入れると効果が高まります。飲酒、喫煙、カフェインの過剰摂取は控え、寝る前のスマートフォンやパソコンの使用も避けることが推奨されます。
また、枕やマットが身体に合わず、就寝時に身体全体に力が入ってしまうことが歯ぎしりや食いしばりの原因になることもあるため、寝具の見直しも有効です。

セルフチェックで早期発見を
以下の症状に該当する場合、歯ぎしりや食いしばりをしている可能性が高いです。
歯を守るためにも早めに歯科医師の診断を受け、治療や予防策を考えることをおすすめします。
- 朝起きたときに顎や歯に痛みがある
- パートナーから歯ぎしりをしていると指摘された
- 歯にひびがあったり、欠けたりしたことがある
- 先端が斜めになっている歯がある
- 口を閉じたときに上下の歯が当たっている
- 集中しているときに気づくと歯を噛み締めていることがある
- 歯の根元が欠けているところがある
- 頬の内側の粘膜に白い線ができている
- 慢性的な肩こりや頭痛がある
通常、上下の顎がリラックスしている状態であれば歯は当たっていません。これは、安静空隙といって、個人差はありますが上下の歯と歯の間に2ミリ程度のスペースがあります。しかし、ブラキシズムがみられる方は、口の周囲の筋肉が常に緊張しており、このスペースがほとんど見られない場合もあります。
まとめ:早期発見・早期治療が大切です
歯ぎしりや食いしばりは、放置すると歯やあご、体全体に大きな影響を及ぼします。
しかし、早期に発見し、適切な治療を行うことで、症状の悪化を防ぎ、健康な歯と顎を守ることができます。マウスピース、噛み合わせの調整、ボツリヌス治療、生活習慣の改善など、様々な対策があります。
当院では、問診、視診、触診、レントゲン検査などを行い、歯ぎしり・食いしばりの原因や程度を正確に診断し、患者様一人ひとりに合わせた丁寧なカウンセリングと治療を心がけています。カウンセリングをとても重要視しており、初めに口腔内写真、レントゲンを撮影し、それらを一緒に見ながら現在の病態の説明、治療の提示を行い、治療のメリットデメリットを伝え、患者様の納得を得られた後に治療を開始します。
少しでも気になる症状があれば、お気軽にご相談ください。「もしかして、私も歯ぎしり・食いしばりをしているかも?」と思ったら、まずはご相談いただければと思います。
赤坂駅7番出入り口から徒歩1分という好立地で、平日(月・水・木)は22時まで、土日は18時まで診療を行っておりますので、お仕事終わりや平日通えない患者様でも通院しやすい環境を整えております。
詳しい診療内容や予約については、赤坂ONO Dental Clinicの公式サイトをご覧ください。皆様の歯の健康を守るため、スタッフ一同お待ちしております。
監修者プロフィール
院長 小野 雄大(おの たけひろ)先生

略歴
– 2015年3月:岩手医科大学 歯科医師臨床研修 修了
– 医療法人(秋田)、岩手医科大学放射線科、神奈川県内医療法人などで幅広く勤務
– 2024年2月:赤坂ONO Dental Clinic 開業
診療スタンス
– 丁寧なカウンセリングを重視し、口腔内写真やレントゲンを用いて現在の状態をしっかり説明
– 患者さまに治療内容のメリット・デメリットを理解していただいた上で選択してもらう治療方針を実践
– 自身も歯科治療の経験があることから、「患者さまに寄り添う治療」を大切にしている

