親知らずの抜歯
- 2024年5月9日
- 口腔外科
<親知らず>
歯は1番前の左右2本の歯をそれぞれ1とし、奥の並びに従って2、3…と定められています。7番目の歯が正常な歯の最奥の歯となりますが、7の更に奥に生えてきた歯を親知らずと呼びます。
親が知らないうちに生える歯だから「親知らず」という名がついたと言われています。親知らずの歯の根は20台半ばで完成します。
アジア人は元々顎が小さく、現代人は顎を使って食事をする機会が減ってきていますので顎が細くなり親知らずの生えるスペースがなくなり、正常に生えることが少なくなってきたと言われています。
また、基本的に親知らずは一番奥の歯であるため、歯ブラシが届きにくく、ケアがしにくい歯です。親知らずに限らず、一番奥の歯の裏側は大変磨きにくいため虫歯や歯周病になりやすいといわれています。
<抜歯の判別>
親知らずは必ずしも抜かなくてはいけないというわけではありません。正常に萌出し上下の親知らずが噛んでいる場合、矯正による移動を考えている場合は抜歯しなくても良いと言われることが多いです。
また、親知らずによる移植(移植が無理な場合もあります。)や最近では親知らずの神経のを培養し他の歯に移植する治療もあります。(神経の移植は最近の治療なので予後のデータがそれほど多くありません、また、高額な治療となります。)
どのような場合に抜歯を考えるのかというと…
むし歯リスクがある、接している歯に対して害がある、痛みがある又は以前何度か痛みが出た、レントゲンで異常が見られる等自分に害がある又は害が出る可能性がある場合は抜歯を考えます。
親知らずによって引き起こされる症例
歯を磨きにくくなるような親知らずの生え方をしていると(斜めや横に生えている)、歯と歯の間に歯石が蓄積していきます。
歯石の蓄積は親知らずの周りに炎症を起こし、歯肉炎や歯周病を起こす原因につながります。また、磨くことが難しいのでとなりの歯との接触点に虫歯を認めることがあります。
歯肉がかぶっている部分はメンテナンスできず不潔な状態になってしまい、汚れによる口臭や歯茎の炎症を引き起こし急激な痛みと腫れが起きることがあります。
斜めに生えた親知らずの場合、手前の歯を押して、歯並びを悪くすると言われていますが賛否両論で、まだ分からないというのが実際です。親知らずは永久歯の奥に生える歯なので、歯ブラシによるメンテナンスが難しいのが特徴です。むし歯になったときも治療器具が届きにくいので、治療が進みにくくなる可能性があります。
このような場合はドクターに相談すると良いでしょう。
<抜歯のリスク>
上下共通の抜歯後リスク
・ドライソケット:抜歯後、血のかさぶたができて治癒していきますが、激しいうがいをしてかさぶたが剝がれてしまうと、その下の骨が露出します。骨が細菌により感染すると激痛となります。
・麻酔や過緊張により気分が悪くなることもあります。
・歯の萌出の仕方で抜歯の難易度が変わります。ドクターに相談しましょう。
上の親知らずを抜歯するリスク
・上顎洞の迷入があります。目の下の辺りに上顎洞(副鼻腔)という鼻腔と繋がっている空洞があります。奥歯の根の先が上顎洞を貫いて生えている場合があります。その場合無理に抜歯すると親知らずが上顎洞に迷入し除去が困難になることがあります。事前にレントゲンで確認をし、上顎洞への穿通が疑われる場合CTを撮影し確認する必要があります。
下の親知らずを抜歯するリスク
・下唇及び舌の麻痺:親知らずの下に下歯槽神経があります。親知らずとの距離が近い場合があり、神経を傷つけたり、圧迫すると麻痺を引き起こすことがあります。CTで確認が必要です。麻痺が起きてしまった場合は直ぐにクリニックへ連絡しましょう。
・痛み、出血、腫れ:下の親知らずは骨が硬いため強い力をかけることが多く、また、横や斜めに萌出することが多いので、抜歯時に歯茎を切ったり、骨を削ったりします。
そのため上の親知らずと比較して痛みや出血、腫れの症状を認めやすいです。
<抜歯後の注意点>
・抜歯後30分ほどガーゼを噛み止血しましょう。
・処方された薬は説明に従って必ず服用しましょう。
・ドライソケット防止のため1~2日はブクブクうがいは控えましょう。
・お酒やたばこ、運動、お風呂は血流が良くなり、痛みや腫れを引き起こします。抜歯当日は控えましょう。(お風呂はシャワー程度にしましょう。)
・下の歯を抜いた場合は1~2週間腫れや痛みが続くことがあります。
<抜歯の補助治療について>
・伝達麻酔:下の親知らずの神経管に直接麻酔を注入します。麻酔によるしびれの範囲が大きく、効果が長くなってしまいますが術中の痛みはほとんど無くなります。
・CO2レーザー:抜歯後にレーザーによる蒸散を行います。殺菌と痛みの軽減、治癒の促進になります。
・CT:レントゲンにて危険の可能性があるときに撮影します。(保険内)
・テルプラグ:吸収性抜歯創用保護剤、抜歯後の出血や痛み、感染を抑えます。
痛みを少なく、安全に抜歯を行うための追加の治療になります。