インプラント後のメンテナンス完全ガイド|頻度・内容・費用まで徹底解説
- 2025年11月18日
- インプラント
インプラント治療後のメンテナンスが重要な理由
インプラント治療を受けられた方、おめでとうございます。
しかし、インプラント治療は「手術が終わったら完了」というものではありません。むしろ、治療後のメンテナンスこそが、インプラントを長く快適に使い続けるための最も重要な要素となります。インプラントは虫歯にはなりませんが、適切なケアを怠ると「インプラント周囲炎」という深刻な病気を引き起こす可能性があるのです。
インプラント周囲炎は、インプラント周辺の歯肉や骨に炎症が起こる病気で、天然歯の歯周病に相当します。この病気が進行すると、せっかく埋入したインプラントが脱落してしまうこともあります。定期的なメンテナンスを受けている患者様とそうでない患者様では、インプラント周囲炎の発症率に大きな差があることが研究で明らかになっています。

メンテナンスを怠るとどうなるのか
メンテナンスの重要性を理解していただくために、まずは適切なケアを怠った場合のリスクについてお伝えします。
インプラント周囲炎のリスク
インプラント周囲炎は、細菌の蓄積が主な原因となって発症します。インプラントは天然歯と異なり、歯根膜という歯と歯肉の間のバリアがないため、細菌感染に対して脆弱な面があります。定期的なメンテナンスを受けていない場合、インプラント周囲炎の発症率は大幅に上昇することが分かっています。
実際の研究データによると、3年以上経過した患者様で、年4回以上メンテナンスを受けている方の周囲炎発症率は約35.5%であったのに対し、年4回未満の方では62.7%にも達したという報告があります。この数字は、メンテナンスの有無がいかに重要かを物語っています。
装置の不具合と噛み合わせの変化
インプラントは長期間使用していると、様々な不具合が生じる可能性があります。
特に歯ぎしりや食いしばりの癖がある方は、インプラントに強い負荷がかかり、上部構造とインプラント体をつなぐスクリュー(ネジ)が緩んだり、人工歯がすり減ったりすることがあります。また、手術直後は正しかった噛み合わせも、時間の経過とともに変化していきます。噛み合わせのバランスが崩れると、顎関節症のリスクが高まったり、インプラント自体が欠けてしまう恐れもあります。
残っている天然歯への影響
インプラントのケアが不十分な場合、隣接する天然歯にも悪影響を及ぼします。インプラント周囲に蓄積したプラーク(歯垢)や歯石が広がり、天然歯の虫歯や歯周病のリスクを高める可能性があるのです。お口全体の健康を守るためにも、インプラントの適切なメンテナンスは欠かせません。
歯科医院で行うメンテナンスの具体的な内容
では、実際に歯科医院でのメンテナンスではどのようなことを行うのでしょうか。
当院で実施している主なメンテナンス内容についてご説明します。
口腔内の詳細なチェック
まず、歯科医師が実際にお口の中を拝見し、インプラントとその周辺組織の状態を入念に確認します。歯肉の発赤や腫れ、出血の有無、インプラントの装置に異常がないか、被せ物や詰め物に不具合はないかなど、細部まで丁寧にチェックします。また、噛み合わせの状態も重要な確認項目です。
レントゲン検査による内部確認
目視では確認できない部分の状態を把握するため、約1年に1回程度、レントゲン検査を実施します。
レントゲン撮影により、歯周病の進行状況や顎の骨の状態、インプラントが顎の骨にしっかりと定着しているかどうかを確認できます。歯科用レントゲンの被ばく量はごくわずかで、人体への影響も少ないため安心してお受けいただけます。
専門的なクリーニング(PMTC)
インプラントや残存歯に付着している歯石やバイオフィルムなどの汚れは、日常のブラッシングだけでは完全に除去することができません。歯科衛生士が、インプラント専用の超音波スケーラーチップなど特別な器具を使用して、インプラントの金属やセラミックを傷つけないよう丁寧にクリーニングを行います。このプロフェッショナルクリーニングにより、インプラント周囲炎の予防が可能になります。
噛み合わせの調整
咬合紙という特殊な紙を使って噛み合わせのバランスを確認し、必要に応じて微調整を行います。噛み合わせの不具合を早期に発見して対処することで、インプラントや周囲の歯に過度な負担がかかるのを防ぎます。
ブラッシング指導とセルフケアのアドバイス
予防のプロフェッショナルである歯科衛生士が、患者様一人ひとりのお口の状態に合わせた適切な磨き方や清掃アイテムの使用方法についてアドバイスします。インプラントには専用のブラッシング法が必要であり、歯ブラシの選び方や力加減、フロス・歯間ブラシの使い方も重要です。セルフケアの質を高めることで、インプラント周囲炎や虫歯・歯周病の予防につながります。

メンテナンスの推奨頻度とタイミング
どれくらいの頻度でメンテナンスを受ければよいのでしょうか?
一般的な推奨頻度
患者様の口腔状態によってメンテナンスの頻度は異なりますが、一般的には3~6ヶ月に1回程度のペースでメンテナンスを受けていただくことを推奨しています。インプラントに特に問題がない場合は、治療完了後1年程度経過してから、年1~2回程度に間隔を開けることもあります。
頻度が高くなるケース
ただし、以下のような場合はより高い頻度でのメンテナンスが必要となることがあります。
- インプラント周囲に軽度の炎症が見られる場合
- 糖尿病などの全身疾患がある場合
- 喫煙習慣がある場合
- 歯ぎしりや食いしばりの癖がある場合
- 口腔内の清掃状態が不十分な場合
これらのリスク因子がある方は、インプラント周囲炎の発症リスクが高まるため、より頻繁なメンテナンスが推奨されます。
メンテナンスに「終わり」はありません
インプラントを長く快適にお使いいただくためには、メンテナンスに「いつまで」という期間はなく、継続して通っていただくことが大切です。定期的なメンテナンスは、インプラントの寿命を延ばすだけでなく、お口全体の健康維持にもつながります。
メンテナンスにかかる費用について
メンテナンスの費用について、多くの患者様が気にされるポイントです。
費用の相場
インプラントの治療自体が保険適用外のため、その後の定期メンテナンスも基本的には自費診療となります。歯科医院によって価格設定は異なりますが、一般的な相場として1回あたり3,000円~10,000円程度となります。メンテナンスの内容や実施する処置によって費用は変動します。
具体的には、以下のような内訳になることが多いです。
- レントゲン検査:1,000円~3,000円程度
- PMTC(プロフェッショナルクリーニング):2,000円~5,000円程度
- 歯科衛生士によるブラッシング指導や口腔内検査:1,000円~3,000円程度
医療費控除の対象になります
メンテナンスで高い頻度での通院が必要になった場合、医療費控除の制度が利用できます。医療費控除とは、1月1日~12月31日の間に支払った医療費(保険適用外も含む)が10万円を超えた場合(年収が200万円未満の場合は年収の5%を超えた場合)に、支払った所得税の一部が戻ってくる制度です。
控除の対象となるのは治療費以外にも、通院に使った交通費や薬代なども含まれます。ただし、医療費控除の制度を利用する際は、企業にお勤めの方でもご自身で税務署に確定申告をする必要がありますのでご注意ください。
保証制度とメンテナンスの関係
多くの歯科医院では、インプラント治療に対して保証制度を設けています。当院でも10年間の保証制度をご用意していますが、この保証を受けるためには定期的なメンテナンスにお越しいただくことが条件となります。メンテナンスを怠った場合、保証期間内であっても再治療の適応外となる場合がありますので、ご注意ください。

ご自宅でのセルフケアのポイント
歯科医院でのメンテナンスと同様に重要なのが、日常生活でのセルフケアです。
正しい歯磨きの方法
インプラントは天然歯と同じ感覚でケアしてしまいがちですが、実は専用のブラッシング法が必要です。柔らかめの歯ブラシを使用し、インプラント周辺を優しく丁寧に磨くことが大切です。力を入れすぎると歯肉を傷つけてしまう可能性があるため、適切な力加減を心がけましょう。
歯間ブラシやフロスの活用
歯ブラシだけでは届かない歯と歯の間やインプラント周囲の汚れを除去するために、歯間ブラシやデンタルフロスの使用をおすすめします。適切なサイズや形状の歯間ブラシを選ぶことがポイントです。当院では、患者様一人ひとりに合った清掃アイテムをご提案しています。
食生活と生活習慣の注意点
硬い食べ物や粘着性の高い食品は、インプラントに負担をかけることがあります。また、喫煙は歯肉の血流を悪化させるため、インプラント周囲炎のリスクを高めます。インプラントを長持ちさせるためには、禁煙をおすすめします。
セルフケアの習慣化が鍵
毎日のセルフケアの質が、インプラントの寿命を大きく左右します。最初は慣れないかもしれませんが、正しいケア方法を習慣化することで、インプラント周囲炎や虫歯・歯周病の予防につながります。
引っ越しや転勤の際のメンテナンス
ライフスタイルの変化により、通院していた歯科医院に通えなくなることもあるでしょう。
他院でのメンテナンスは可能です
インプラントは治療を受けた歯科医院でメンテナンスを受けることが最も望ましいですが、引っ越しや転勤によって通えなくなった場合、新たにメンテナンスを受け付けている歯科医院を探す必要があります。その際は、インプラントのメーカー名や型番、治療内容が記載された資料を持参すると、スムーズに引き継ぎができます。
治療記録の保管が重要
インプラント治療を受けた際の診断書や治療計画書、レントゲン写真などは大切に保管しておきましょう。これらの資料があると、新しい歯科医院でも適切なメンテナンスを受けることができます。
まとめ:インプラントを長く使い続けるために
インプラント治療は、失った歯を取り戻す優れた治療法ですが、治療後のメンテナンスが何より重要です。
定期的な歯科医院でのメンテナンスと、日々のセルフケアの両方を継続することで、インプラントを長く快適にお使いいただけます。インプラント周囲炎などのトラブルは、早期発見・早期治療が鍵となります。自覚症状がなくても、定期的なメンテナンスを受けることで、問題を未然に防ぐことができるのです。
当院では、患者様一人ひとりの口腔状態に合わせた最適なメンテナンスプランをご提案しています。インプラントのメンテナンスについてご不安な点やご質問がございましたら、お気軽にご相談ください。皆様の大切な歯を守り、健康で快適な生活をサポートすることが、私たちの使命です。
インプラント治療やメンテナンスについて、より詳しい情報をお知りになりたい方は、ぜひ当院までお問い合わせください。赤坂駅から徒歩1分という好立地で、平日は22時まで、土日も18時まで診療しておりますので、お仕事帰りや休日にも通いやすい環境を整えています。
詳細はこちら:赤坂ONO Dental Clinic
監修者プロフィール
院長 小野 雄大(おの たけひろ)先生

略歴
– 2015年3月:岩手医科大学 歯科医師臨床研修 修了
– 医療法人(秋田)、岩手医科大学放射線科、神奈川県内医療法人などで幅広く勤務
– 2024年2月:赤坂ONO Dental Clinic 開業
診療スタンス
– 丁寧なカウンセリングを重視し、口腔内写真やレントゲンを用いて現在の状態をしっかり説明
– 患者さまに治療内容のメリット・デメリットを理解していただいた上で選択してもらう治療方針を実践
– 自身も歯科治療の経験があることから、「患者さまに寄り添う治療」を大切にしている

