歯周病・クリーニングと定期健診の必要性
【概論】
日本人の歯周病罹患率は30代から徐々に増加し、40代では20%~30%、55歳以上は45%以上とされています。(2021年厚生労働省調べ)
また、歯周病により保存不可と診断され抜歯となったケースは55歳以上で45%以上とされ現在抜歯の原因第1位です。
歯周病は自覚症状はほとんどない場合が多く、長い年月をかけて歯の周りの骨を溶かし歯の脱落をまねくため検査を受けていない潜在的な歯周病患者数はもっと多いと見るべきでしょう。
2011年の歯周病検査では30代以上の8割が歯周病に罹患しているとされていましたが、これは歯周病の前段階である歯肉炎も含んだ結果であるので誤りですが、歯周病である又は病気の要因を持つ方が8割以上という意味であれば間違っていません。
また、歯周病の治療は状態によっては長い治療期間を必要としたり、歯茎を切開し奥にある歯石を除去する手術、治療しても予後が悪く抜歯になるケースも多くあり、早期の発見による治療や予防によるクリーニングを推奨されています。
【歯周病とは】
歯周病とは、歯と歯茎の境目(歯周ポケット)に細菌が侵入し、侵入した細菌の出す毒素(LPS)によって歯を支えている骨を溶かします。結果的に骨の支えを失った歯が脱落する病気です。
個人の歯磨きで磨き残しがなく完璧に磨くのはとても難しく、歯の汚れは約2週間程度で唾液中のリン酸やカルシウムと結合し歯石となります。(厚生労働省e-ヘルスネット)
歯石は歯面に強固に付着するため歯磨きでは除去できなくなります。歯石内では歯周病原菌が増殖し(汚れ1mg中に1億以上存在するといわれています。)歯茎に炎症が起こります。歯茎の炎症である歯肉炎から歯周病の初期に悪化すると歯ブラシの毛先が届かなくなるため、歯科医院にて治療が必要となります。
(歯周病は歯周ポケットが歯と歯の根の境目から4mm以上存在すると歯周病と呼ばれます。通常は1~2mm)
【症状】
《歯肉炎(歯周病前段階)》
・歯茎の腫れ、出血。:細菌により歯茎が炎症を起こした状態。
・口臭。:口臭の原因はほとんどが歯周病によるもの、治療すると治ります。
・歯石でざらざらする。
・口の中がネバネバする。:ストレスや寝不足など様々な原因がありますが、歯周病もその1つです。
《歯周病》
歯肉炎の症状にプラスして、
・歯茎が急激に下がってきた。:歯茎は腫れていますが、支える骨が溶けているので時間の経過とともに全体的に下がります。
・歯がぐらぐら動揺する。:歯を支えている骨がなくなるので、動揺します。
・口臭、出血がひどくなる。
・膿が出てくる。
・食物が詰まりやすい。:骨が溶けて隙間が大きくなるため。
・歯が浮いたような感じがする。歯の周りの骨が全て無くなると歯茎の繊維でくっついているだけの状態になります。
これらの症状があれば注意してください。
【歯周病のリスクファクター(間接的な増悪因子)】
(以下の記述は歯周病の進行を早める要因となります。)
抵抗力の低下を招くもの
・糖尿病
・喫煙
・ストレス
・不規則な生活習慣
汚れが溜まりやすい状態を作り出すもの
・歯並び
・不適合なかぶせものや入れ歯
過剰な噛み合わせの力により歯の周りの組織がダメージを負うもの
・歯ぎしり、食いしばり
・歯の欠損:他の歯で欠損歯の力を
その他
・薬の服用:薬によっては歯茎が腫れる副作用、長期服用により体の抵抗力が下がることがあります。
・口呼吸:口の中が乾燥状態になると菌数が増加します。
このような方は歯周病になりやすいあるいは進行が速い傾向にあるため、歯科医師に相談することをお勧めします。
また、妊娠中はホルモンバランスが不安定になるため歯肉炎への罹患率が高くなります。(妊娠性歯肉炎)
【予防】
個人:口の中を清潔に保つことが大事です。特に歯と歯の間に汚れが溜まりやすいので意識して磨きましょう。
・1日3回15分以上の歯磨き
・フロスなどの歯間清掃用器具、洗口剤の使用。
・生活習慣の改善
クリニック
・歯周病検査:どの歯のどの部位が歯周病に罹患されているかを検査します。
・クリーニング・歯石取り(2wで歯石になるため1か月予防の歯科が多いようです。)
・歯磨き指導・正しい歯磨きの仕方を学ぶことにより磨き残しを少なくします。
・歯のない部位、不適合のかぶせものへの補綴
・矯正による歯並びの改善
・歯ぎしりなどへの予防・治療
ポケット内の歯石、汚れの除去が歯周病の予防であり治療です。
今ある歯はご自身の正しい歯磨きと定期的な歯科メンテナンスを行わなければいずれ崩壊します。
5年後・10年後を見据え健康的なお口の中を維持し、いつまでも普通に食べられる幸せを保って頂きたいと願っております。